犬の歯周病と心臓病について|歯周病が心臓に及ぼす影響について獣医師が解説

歯磨きされるチワワ

犬が歳を重ねると気になる心臓病。
特に小型犬やキャバリアなどの特定の犬種では、シニア期に心臓病を発症する確率が高いといわれています。
愛犬の心臓病のリスクはできるだけ下げてあげたいですよね。
愛犬家の皆さんは犬の歯周病が心臓病に影響を与えるということをご存知でしょうか。

「犬の口臭が気になるけど、これを放置していたらどうなるの?」
「犬の歯周病と心臓病の関連性がいまいちわからない。」
こんな疑問をお持ちの飼い主様も多いかもしれません。
今回は犬の歯周病が心臓病にもたらす影響について詳しく解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、日頃の口腔ケアのモチベーションアップのきっかけにしていただければ幸いです。

犬の歯周病と心臓病の関連性

犬の歯周病が心臓病に影響を及ぼすと聞いても、すぐに理解できる方は少ないと思います。

  • 歯周病とは何か
  • 歯周病がどのように心臓病に影響を及ぼすのか

について詳しく解説します。

歯周病とは何か

歯周病とは、歯の表面や歯周ポケットについた汚れを放置することによっておこる口の中の病気です。
犬が食べ物を食べて歯についた汚れをそのまま放置していると、その汚れをエサにして細菌が大量に繁殖します。
繁殖した細菌は歯肉に炎症をおこし、痛みや出血などの症状を引き起こします。
これが歯周病の始まりです。

歯周病は悪化すると歯や顎の骨を溶かしてしまうこともあるため注意が必要です。
犬は歯周病による口の痛みが原因で食欲を無くしたり、元気を無くしたりすることもあります。

歯周病がどのように心臓病に影響を及ぼすのか

歯周病によって歯肉に炎症がおこると、細菌が血管に入って血流に乗り全身へと運ばれます。
最終的に心臓に細菌が到達すると、心臓の膜や弁に炎症を起こします。
炎症をおこすと心臓の膜や弁は分厚くなり、本来の働きができなくなってしまいますね。
その結果僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病が引き起こされるというのが、歯周病が心臓病に影響を及ぼす仕組みです。

ちなみに僧帽弁閉鎖不全症とは犬の心臓病の中で最も多い疾患です。
心臓の中の部屋を仕切って血液の逆流を防ぐ僧帽弁という弁が変性することで発症します。
最終的には心不全を引き起こし死に至る可能性のある病気です。

犬の心臓病の発生リスクを下げるためにできること

おもちゃを持って走っているチワワ

歯周病が原因で心臓病になってしまうなんて、怖いですよね
もちろん心臓病の原因は歯周病だけではありませんが、歯周病を予防することで心臓病の発生リスクを下げることはできるかもしれません。

歯周病の予防で一番大切なのは歯磨きです。
人間では、「1日1回しか歯磨きをしない人と1日2回以上歯磨きをする人では心臓病になる確率が異なる。」という報告があります。
前者と後者を比べると、後者に比べて前者の方が1.7倍も心臓病になるリスクが高いといわれています。
一般的に犬は人間よりも歯磨きの頻度が少ないです。
愛犬の歯磨きの回数をできるだけ多くしてあげることで、歯周病を予防し心臓病のリスクを下げることができると考えられます。

「どれくらいの頻度で歯磨きをすればいいの?」
こんな疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
できれば毎日の歯磨きが理想的ですが、それを継続できる方は少ないです。
必ず毎日歯磨きをすると決めて途中で挫折してしまうよりも、2〜3日に1回の歯磨きでもいいから一生涯続けてあげる方がいいです。

この「2〜3日に1回」という頻度には根拠があります。
詳しく解説していきましょう。

この歯磨きの頻度は犬の歯についた歯垢が歯石に変わるまでにかかる日数と関係しています。
犬は人と違って虫歯にはなりにくいといわれています。
その代わり「歯石」といって、歯についた歯垢が石のようになりやすいというのが特徴です。
歯石が付着すると歯周病菌が一層増えやすくなり、歯周病が急速に進行しやすくなります。
歯石は一度歯にできてしまうと全身麻酔をして歯科処置をしなければ取り除くことが困難です。
歯垢が歯についてから2〜3日で歯石になるといわれていているため、最低でも2〜3日に1回は歯磨きをしてあげると良いでしょう。

まとめ

笑っているトイプードル

いかがでしたか?

歯周病が心臓病にもたらす影響がお分かりいただけたでしょうか。
歯周病や心臓病は犬がシニアになってから発見されることが多いです。
歯周病の原因である歯石を安全かつ確実に除去するには全身麻酔が必要ですが、全身麻酔にはリスクが伴います。
シニア犬ではなおさら全身麻酔のリスクが高くなります。

当院は歯科診療に力を入れており、シニア犬の全身麻酔下での歯石除去にも対応可能です。
愛犬の歯周病や心臓病についてお悩みの際はぜひ当院にご相談ください。

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