小型犬に歯周病が多いのはなぜ?理由と予防のポイントを解説

小型犬と暮らしていると「口が少し臭う」「歯ぐきが赤い気がする」といった変化に気づくことがありませんか?
犬の歯のトラブルで最も多いのが歯周病です。
特に小型犬では歯周病が非常に多いです。
3歳以上の小型犬の約8割がすでに歯周病にかかっているともいわれています。

今回は小型犬に歯周病が多い理由と飼い主様が日常生活で気をつけたいポイントを解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、愛犬の歯を長く健康に過ごせるよう参考にしてみてください。

おもちゃを引っ張るポメラニアン、チワワ

犬の歯周病とは?

犬の歯周病とは、歯の表面に付着した歯垢や歯石に含まれる細菌により、歯ぐきや歯を支える組織が炎症を起こす病気です。
それぞれ歯ぐきの炎症を歯肉炎、歯を支える組織の炎症を歯周炎と呼びます。
歯周病は歯肉炎や歯周炎の程度によって4つのステージに分けられます。

  • ステージ1:歯肉炎のみ
  • ステージ2:軽度の歯周炎
  • ステージ3:中程度の歯周炎
  • ステージ4:重度の歯周炎、歯槽膿漏

ステージ4では歯が抜けてしまうことや歯周病の原因となる細菌が全身に広がり危険な状態になってしまうこともあります。
人と違って犬は虫歯が少ない代わりに、歯周病の進行がとても早いのが特徴です。

小型犬に歯周病が多い理由

犬の中でも小型犬は特に歯周病が多いといわれています。
次に小型犬に歯周病が多い代表的な理由を挙げていきます。

顎が小さく歯が密集している

小型犬は体が小さいにもかかわらず42本もの永久歯が生えています。
歯の本数に対して顎が狭いため、歯と歯が重なりやすく隙間に汚れがたまりやすくなるのです。
この隙間に歯ブラシが届きにくいため、歯垢や歯石が短期間で蓄積してしまいます。

歯並びや噛み合わせの問題

チワワやトイプードルなどは、歯がねじれて生えたり重なったりすることが多い犬種です。
歯並びが乱れた状態は磨き残しが起きやすく、歯周病リスクが高くなります。

乳歯が残りやすい

小型犬では、永久歯が生えてきても乳歯が抜けずに残る「乳歯遺残」が起こりやすいです。
乳歯遺残があると二重に並んだ歯の間に汚れが溜まり、歯周病のリスクとなります。

唾液の自浄作用が弱い

唾液には口の中を洗い流す作用があります。
小型犬は口の中が小さく、唾液による自浄作用が不十分です。
唾液による自浄作用が十分行えないことで、犬の口腔内に歯垢が残りやすくなります。

食生活の影響

小型犬は柔らかいフードやおやつをもらう機会が多く、歯に汚れが付きやすい傾向にあります。
犬は人間のように毎食後に歯磨きをすることは少ないです。
犬の歯に汚れがついた時間が長いと歯周病を引き起こしやすくなります。

小型犬の歯周病が進行しているサイン

小型犬の歯周病が進行してくると次のような症状が見られます。

  • 強い口臭
  • 歯ぐきの出血や腫れ
  • 歯のぐらつき、脱落
  • 固いものを食べない
  • 頬が腫れる
  • 元気・食欲の低下

歯周病の末期では単なる口臭や歯の問題ではなく、全身の健康にも影響します。
特に心臓病や腎臓病のある犬では、歯周病の管理が全身状態にも直結しますね。

走っている茶色のトイプードル

小型犬の歯周病予防に飼い主様ができること

小型犬の多くがかかっている歯周病ですが、少しでも予防をしてあげたいですよね。
日々のデンタルケアなどを行うことでも歯周病の進行を防ぐことができます。
飼い主様ができる歯周病予防には次のようなものがあります。

毎日の歯磨き

歯磨きは犬の歯垢を物理的に落とせるので、歯周病リスクを減らせます。
最初はガーゼで優しく歯を触ることから始め、徐々に歯ブラシに慣らしていきましょう。
子犬の頃から歯磨きトレーニングを行うことが理想です。
歯磨きトレーニングが上手くできない場合は動物病院に相談してみましょう。

デンタルグッズの活用

犬に歯磨きガムや飲み水に混ぜるタイプの口腔ケア剤などを補助的に取り入れることも推奨されます。
デンタルグッズのみでは犬のデンタルケアとしては不十分なので、毎日の歯磨きと併用しましょう。

食生活の見直し

柔らかすぎるフードばかりを犬に食べさせてしまうと、歯周病を進行させてしまう可能性があります。
柔らかいフードだけでなく、ドライフードもバランス良く犬に食べさせましょう。

定期的な歯科健診

動物病院で犬の口の中をチェックしてもらうことも重要です。
次の乳歯遺残と歯石について確認してもらいましょう。

乳歯遺残の有無

犬の口の中に乳歯遺残がある場合は抜歯が推奨されます。
犬の不妊手術の際に併せて乳歯を抜いてもらうことが多いですね。

歯石の程度

犬の歯石が多い場合は、スケーリングと呼ばれる歯石除去を行うことで口腔環境を改善できます。
スケーリングでは普段の歯磨きでは届かない犬の歯周ポケットまで綺麗にすることが可能です。
日常的に犬の歯磨きをしていても、磨き残しがないかチェックしてもらいましょう。

歯磨きをされるチワワ

歯周病予防を始めるベストタイミング

歯周病予防は子犬のうちから歯磨きを習慣化することが理想です。
犬は大人になるにつれて、口元を触られるのを嫌がるようになることが多いです。
子犬のうちに口元を触られることに慣れることで、成犬になっても歯磨きがスムーズに行えます。
成犬になってからでも歯磨きトレーニングを始めることは遅くありません。
動物病院で正しくトレーニングを行うことで、自宅で歯磨きができるようになる可能性もあります。

まとめ

小型犬はさまざまな要因から歯周病にかかってしまうことが多いです。
歯磨きなどのデンタルケアをしっかり行うことで、小型犬の歯周病は予防できる病気でもあります。
犬が歯磨きを嫌がるからといってデンタルケアを諦める必要はありません。
成犬になってからでも歯磨きトレーニングは可能です。

当院では小型犬の歯科診療にも力を入れております。
スケーリングや抜歯といった根本治療だけでなく歯磨きトレーニングなども行っています。
「最近口が臭う」「歯磨きができなくて困っている」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。

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