犬の歯周病でレントゲン検査って必要?|歯周病のレントゲン検査について詳しく解説

笑っている黒いラブラドールレトリーバー

「最近、愛犬の口が臭う…」そんなお悩みはありませんか?
それは歯周病のサインかもしれません。

歯周病は「口臭くらい大丈夫」と見過ごされやすい病気ですが、進行すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を与えることがあります。
正しく診断し治療するためには、レントゲン検査(X線検査)が欠かせません。

この記事では、犬の歯周病とレントゲン検査の重要性についてわかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬の歯を守るためにお役立ていただければ幸いです。

犬の歯周病とは?

歯周病とは、歯ぐきが炎症を起こす歯肉炎と、歯を支える骨や組織に炎症が広がる歯周炎の両方を含んだ病気を指します。

歯周病が進む流れは以下のとおりです。
歯についた歯垢をエサに細菌が増え、やがて石のように固まって歯石になります。
歯石は歯みがきでは落とせず、さらに細菌が増えていきます。
増えた細菌は歯ぐきに炎症を起こし、進行すると歯を支える骨である歯槽骨(しそうこつ)を溶かすため、最終的には歯が抜け落ちてしまうのです。
細菌は血液を通じて全身に広がって心臓や腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすこともあります。

年齢とともに歯周病を持つ犬の割合は増え、3歳以上の犬のほとんどが歯周病であると言われています。
中・大型犬よりも、歯が小さくて歯垢が溜まりやすい小型犬で多いです。

歯周病の症状は?

歯周病の初期は見た目の変化が少なく、気づかれにくい病気です。
飼い主さんが気づきやすい症状としては、次のようなものがあります。

  • 口臭が強くなる
  • 歯ぐきが赤く腫れる、出血する
  • よだれが増える
  • 食べにくそうにする
  • 硬いものを食べなくなる
  • 顔を触られるのを嫌がる
  • くしゃみをする
  • 鼻血が出る

一見歯と関係なさそうな症状もあるため、まずは知っておくことが大事です。

歯周病ではなぜレントゲン検査が必要なの?

犬の下の顎の模型

実は、外から見ただけでは歯周病により歯が根本から折れているのか、歯槽骨がどのくらい壊れているかは判断できません。
レントゲン検査を行うと外見からはわからない隠れた異常を見つけたり、治療が必要な歯と温存できる歯を見分けたりすることができます。
犬の歯周病においてレントゲン検査は、正確な診断と適切な治療計画を立てるのに必須の検査です。

レントゲン検査ってどんなことをするの?

レントゲン検査は、見たい箇所に放射線をあてて、透過の具合を画像として写し出す検査です。
骨や歯のように硬い部分は白く、歯ぐきや壊れた骨などは黒く写るため、その違いを利用して状態を確認します。
放射線の量はごくわずかで、安全に行える検査ですのでご安心ください。

「痛くない」ということもレントゲン検査の大きな特徴です。
健康診断でレントゲン検査を受けたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
犬でも同じで、カシャッと一瞬写真を撮るイメージです。

なお、一口にレントゲン検査と言っても、標準レントゲン検査と口腔内レントゲン検査にわけることができます。
それぞれの検査の違いは以下のとおりです。

標準レントゲン検査

通常のレントゲン撮影装置を用いて犬の頭部を丸ごと撮影する検査です。
これにより、顎の骨折や腫瘍の有無を確認します。
歯の細かい部分はわかりませんが、全体像を把握するのに適しています。

口腔内レントゲン検査

歯科用レントゲン撮影装置という特殊な機械を用いて、狙った歯をピンポイントで撮影する検査です。
全身麻酔をかけて犬が動かないようにして撮影することで、歯周病や歯の状態を細かく見ることができます。

レントゲン検査は歯周病の治療にどう役立つの?

レントゲン検査による歯の正確な情報があることで、治療が必要な歯の見落としあるいは不要な抜歯を避けられます。

犬の歯周病は、軽度であればスケーリング(歯石取り)などの歯科予防処置、進行しているのであればさらに歯周外科と抜歯により治療します。
ただし、見た目だけで重症度を判断し、治療方針を決めることはできません。

たとえば、一見問題ない歯であってもレントゲン検査により歯の根元が折れているとわかれば抜歯が必要です。
一方で、歯石がたくさんついていても歯槽骨がそれほど壊れていなければ、抜歯せずスケーリングのみで対処することも可能です。
どのように治療するかを決めるためにも、レントゲン検査は欠かせません。

レントゲン検査は歯周病の予防にどう役立つの?

歯を磨かれるミニチュアダックスフンド

犬の歯周病は、ケア次第でしっかり予防することができます。
でも見えない部分だからこそ、きちんと愛犬の歯の健康を守れているのか不安ですよね。
レントゲン検査は、以下のような形で予防と日常ケアにも活用できます。

  • 見た目では気づかない初期の異常や問題を見つける
  • 歯周病の進行を確認する
  • 骨や歯根の状態を確認し、歯磨きやデンタルグッズでの予防が十分かチェックする

レントゲン検査で定期的に歯の状態が確認できると、安心して日々のケアを続けられる方が多いです。
異常が見つかった場合に早期に対応できるのも大きなメリットです。
歯周病の治療を終えたあとも、半年から年1回は歯のレントゲン検査を受けることをおすすめします。

まとめ

犬の歯周病は、3歳以上の犬でよく見られるありふれた病気です。
ただし、口臭や歯ぐきの腫れだけでなく、歯が抜けたり全身の病気につながることもあり、軽視はできません。

歯を外から見るだけでは、歯の根や骨の状態まではわかりません。
レントゲン検査により、隠れた異常を早期に見つけ、どの歯を治療するか、どの歯を残せるかを正しく判断できます。
治療の見落としや不要な抜歯を避けるため、レントゲン検査は犬の歯周病治療において必要不可欠な検査です。
そのほか、初期の異常や歯周病の進み具合、日々のケアの状態を確認するなど、予防の面でも活用できます。

レントゲン検査を受けるにあたり、放射線の被爆や麻酔のリスクなど、不安に感じることもあるかと思います。
心配事や疑問があれば遠慮なくご相談ください。

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