犬の歯ぐきにできる「エプリス」って何?|獣医師が詳しく解説

笑っている白い犬

愛犬の歯ぐきにしこりや腫れを見つけて、「これって大丈夫?」と不安になったことはありませんか?
それは犬によく見られる歯肉腫、いわゆる「エプリス(エプーリス)」という病気かもしれません。

エプリスは、中〜高齢の犬に比較的よく見られる歯肉(歯ぐき)の良性腫瘍です。
基本的に転移することはなく、命に関わる病気ではありません。
しかし、放っておくと大きくなり、歯や顎の骨を圧迫してしまうことがあります。
さらには悪性化するケースもあるため、早めの対応が大切です。

本記事では、エプリスの症状や診断、治療法などについてわかりやすく解説します。
「エプリスと診断されたけど、どうすればいいの?」
「手術が必要なの?」
といった不安や疑問を解消するきっかけになれば幸いです。

犬のエプリスとは?

エプリスは、犬の歯肉にできる良性腫瘍の一種です。
原因としては歯肉炎などによる慢性的な炎症や、歯ぐきへの持続的な刺激が挙げられます。

エプリスは中〜高齢の犬で発生しやすいです。
どの犬種にも起こる可能性がありますが、特に短頭種やボクサーで多いと報告されています。

良性腫瘍のため転移することはまれで、命に関わるケースは少ないです。
しかし、大きくなると歯や顎の骨を圧迫し、噛む・食べるといった日常生活に影響が出ることがあります。

分類

エプリスは主に次の4タイプに分類されます。
どのタイプのエプリスかを見た目や症状のみで判断することはできず、診断には細胞診や病理組織検査が必要です。

  • 繊維腫性エプリス
  • 巨細胞性エプリス
  • 骨形成性エプリス
  • 棘(きょく)細胞性エプリス

棘細胞性エプリスは現在、厳密には「エプリス」に分類されません。
歯の細胞から発生する歯原性腫瘍として、「棘細胞性エナメル上皮腫」という名称に変更されています。
かつてはエプリスの一種として扱われていたため、この記事ではわかりやすさのために併記しています。

通常のエプリスは、症状がなければ経過観察になることも多い腫瘍です。
ただし、棘細胞性エナメル上皮腫は歯槽骨(歯を支える骨)を破壊する性質があるため、進行を防ぐには早期の治療がとても重要です。

エプリスの診断

診察を受けるヨークシャーテリア

診断の際は、まず視診や触診でしこりの大きさ・硬さ・位置などを丁寧に確認します。
必要に応じて細胞を針で採って検査する細胞診や、組織の一部を採って検査する組織生検といった病理組織検査が必要になります。
しこりの見た目だけでは、エプリスか悪性腫瘍を含む他の病気なのかを判断できないためです。
どの分類のエプリスなのかもこれらの検査で特定できるため、適切な治療方針を立てるうえでも欠かせません。

細胞診や組織生検に加えて、レントゲン検査やCT検査で腫瘍が骨に広がっていないかどうかを詳しく調べることもあります。

エプリスの症状

エプリスの症状には以下のようなものがあります。

  • しこりから出血する
  • 口臭が増える
  • 食べづらそうにする
  • 片側だけで噛む
  • よだれが増える

エプリスは悪性腫瘍とは異なり、しこりが急速に大きくなることはまれです。
しかし、毎日見ていると変化に気づきにくいこともあります。
しこりの様子を写真で記録し、少しずつの変化を確認することがおすすめです。
食事の様子や口臭、出血の有無などもメモしておくと、診察時により正確な情報を伝えることができます。

エプリスの治療

手術器具たち

エプリスの治療は、基本的に麻酔下での外科切除が中心となります。
不十分な切除は再発の原因になるため、エプリスは根元からしっかり取り除くことが重要です。
腫瘍の位置や大きさによっては、抜歯したり顎の骨の一部を同時に切除したりすることもあります。

一方で、高齢犬など全身麻酔にリスクがある場合には、手術ではなく緩和ケアや経過観察となることもあります。
エプリスの種類によっては、食事や生活に支障がなければ経過観察となるケースも少なくありません。

手術を行った場合、しっかりエプリスを切除できていれば、多くの犬は再発なく元気に生活できます。
転移することもほとんどありません。
ただし、棘細胞性エプリス(棘細胞性エナメル上皮腫)は再発することがあります。
そのため、術後は3ヵ月から1年ごとに定期検査を受けるのが望ましいです。
再発した場合は再手術や治療方針の見直しが必要ですが、早期発見で負担を減らすことができます。

エプリスの予防

エプリスを完全に予防する方法はありません。
ですが、エプリスは歯肉炎などの慢性的な炎症がきっかけで発生することもあるため、日頃から歯ぐきの健康を保つことで、発症リスクをある程度減らすことはできます。
毎日少しずつでも歯みがきを習慣にし、無理のないペースで慣らしていくことが大切です。

オメガ3脂肪酸やビタミンEなど、抗炎症作用があるサプリメントを活用するのもひとつの方法です。
犬の体質や病気の状態によって合わない場合もあるため、使用する前に必ず獣医師にご相談ください。

まとめ

犬のエプリスは、歯ぐきにできる良性腫瘍です。
多くは転移せず、命に関わることはほとんどありません。
ただし、放っておくと歯や顎の骨に悪影響を及ぼすことがあり、中には棘細胞性エプリス(棘細胞性エナメル上皮腫)という進行性のタイプもあります。

早期発見のためには日頃から愛犬の口を観察し、少なくとも年に1回は定期検診を受けましょう。当院は犬の歯科に力を入れている動物病院です。
歯ぐきにしこりを見つけたり、食べづらそうな様子が気になったときは、いつでも当院にご相談ください。

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